【作業分析】大人のぬり絵

当事業所に常駐の作業療法士による、各作業についての分析と見解を掲載しています。
患者様・進路を検討されている方へのご参考にしていただけると幸いです。


【大人のぬり絵作業分析】

◆要約◆

指先を使うことにより、脳を活性化させます。
脳が元気になると体全体が元気になり、さらに心も元気になります!
お手本を参考にしつつ、自分のセンスも取り入れて絵を完成させましょう☆彡


●大人のぬり絵の意義・メリット●

人間の指先は『つかむ』『握る』『つまむ』など、細やかな動きや作業をすることが多く、生活に欠く事が出来ない動作を担っています。


体を動かすためには、脳の前頭葉にある『運動野』という部位が関係しています。

大腿部などの大きな筋肉を動かすための運動野は比較的コンパクトになっていて、逆に手先のような、細かな筋肉を連携させるための運動野は大きくなっています。


指先を使うことは、脳の血流を増大させ、活性化に大きな役割を果たすと考えられています。
近年リハビリ業界でも、脳疾患からの回復や認知症の予防には
『ぬり絵など指先を使用した訓練が効果的』
という考えが注目されています。


また、運動野がある『前頭葉』は思考や理性にも関係しており、日常生活を営む上での『感情のコントロール』にも好影響を及ぼします。

そのため、脳疾患や認知症によるリハビリには、指先に注目を置いた作業療法が効率的とされています。


●ぬり絵で《脳全体を刺激する》●

ここ数年、「大人のためのぬり絵」がブームになっています。

子供向けのぬり絵よりも細かな描写になっており、

・浮世絵のような昔ながらの絵画
・有名画家の作品
・美しい景色
・想像上の生き物


などのテーマが人気を集めています。

真っ白な紙に黒い線だけで描写されたイラストを塗るためには

・視覚を通して全体像を把握・認識する(後頭葉)
・今までの知識(過去に見た形や色を参考)や経験をたどり、ふさわしい色を判断する(側頭葉)

という手順が必要になります。

それらの情報を基に、
・『どう着色していくか』の手順を組み立てる
・実際に手を動かし、ペンを握り着色する(前頭葉・前頭連合野(運動野))

という脳の機能をフル活用する必要があります。

筋肉トレーニングよりも、患者様が楽しんで訓練を続けられ、かつ脳全体の活性化が図れるのが特徴です。

また、集中して色を塗ったりグラデーションを付けたりと、彩色作業を続けることで、自律神経の働きが整いリラックス効果があるという研究結果もあります。

脳疾患で長く寝たきりになっていた人に対しては、座った姿勢を保ち、腹部の筋肉を補強することもできます。

●ぬり絵導入時の注意点●

このように良い効果の多い『ぬり絵』ですが、一点留意したいのは、
『対象者の年齢や症状に合わせて素材を選択する』ことです。

・リハビリを始めたばかりの為、高齢の患者様へ子供用のぬり絵を提供したところ、プライドが傷つきぬり絵療法を嫌がった

・本格的な大人のぬり絵を提供したが、症状の回復が停滞していたので思うように彩色できず、ストレスを溜める結果となった


といったケースは、いずれも『症状や意欲をきちんと分析せずに素材を提供したこと』が原因です。

そうした場合、逆に脳への働きを弱める結果となる事があります。
あくまで、リハビリの主体は『患者様・利用者様』にあるということを、周囲は確認する必要があります。

コメントを残す

WordPress.com Blog.

ページ先頭へ ↑